発達障害ってなんだろう?自閉症ってなんだろう?私は子どもが生まれるまで、全く知識も興味もありませんでした。そんな私でもやっぱり子どもが生まれて、仕事を辞めて育児に携わってると、子どもの状況やいろんなことが心配になることがあります。
最近も妻と保育園や私達家族の育児方針について、話し合いました(少しケンカもした)
それで私達(特に私には)育児に関する知識が少ないと感じ、今までも本を読んだりしてきましたが、最近になって10冊程度の子育て関連本を購入して勉強しました。
その中でも一番ズシッと心に響いた本が、今回紹介する【リカと3つのルール 自閉症の少女がことばを話すまで】です。
これは子育てをしているお父さん、ビジネスと家庭を両方とも大事にしている男性はぜひ読むべき本です。
どんな内容なの?
本書は著者の幼少期に経験したお金の苦労により、お金に執着する父親と同じ道を歩むまいと、仕事と家庭で成功した話。順風満帆な生活を送っていたが、自閉症のお子さんを授かることで人生が一変した部分。愛情と財産の一切を娘さんに注ぎ、応用行動分析との出会いによって、リカちゃんが一つ一つ成長していく過程が描かれています。
本書のタイトルにもある「自閉症の少女がことばを話すまで」というタイトルには、人間だけが持つ言語コミュニケーションの壮大さを改めて感じさせてくれる。
本書を読むまで、私は「自閉症」に関しての知識と認識が足りなかった。
言葉として「自閉症」を知ってはいたけど、いままで考えていた自閉症は言葉のイメージでしかなく、せいぜい人とのコミュニケーションが苦手な病気ぐらいにしか認識していなかった。
言葉を話すという当たり前のコミュニケーションが、自然界においていかに異質なもので、難しいことなのかをリカちゃんを通して学ぶことができたのは、子育て中の私にとって大きな収穫です。
リカちゃんと著者のご家族が経験した”成長記録”は、育児や家庭だけではなく、応用行動分析があらゆるビジネス、家庭環境において応用できることも本書では教えてくれる。
バリバリの育児本ではないけれど、私にはこれまで読んできた育児本以上に子育てのことを考えることができた。
子育てに共通する悩み
子どもが生まれてから4年以上、ずっと子育てに携わってると、やはりふとした時に子どもたちの仕草や行動が気になることがある。
「この子は何か違うんじゃないか?」
「みんなこんなことをするのかな?」
「発達障害ってなんだろう?」
子育てをしている親なら、誰もが一度でも考えたことがあると思う。私自身は何度もあるし、発達障害に関する本も何冊も読んでいる。
特別支援学校で先生をしている義理の姉に相談したこともあった。
本書は何冊も出版を手がけている著者が、自身の体験を描いている本である。そのため言葉の表現が恐ろしく的確で、目の前の情景をありありとイメージさせてくれる。
それだけにリカちゃんが自閉症だと気づいた時の描写は・・・私は息が止まってしまい、動機が激しくなり、今すぐ本を閉じて逃げ出したくなった。
しかし本書に引きこまれてしまっているため、読むことを辞めることはできない。これは文学賞レベルの小説を読むような感覚と同じだった。
本を読んでいたのは夜中だったが、あまりに没頭感があったため、横で寝ている娘の顔を何度も確認した。子どもと一緒に歩む理想の人生を夢見ているお父さんにとっては、残酷すぎる事実がそこにはあった。
成長をあきらめない
子育てをしていると、本当にいろんな”常識”が家族の肩に降り掛かってくる。
例えば「3つ後の魂百まで」子どもの人格は3歳までに決まってしまう類のことだ。
多くの人がそれを信じて、3歳からは社会性を育むために保育園に入れたほうがいい。クリティカルエイジの時に多言語を学ばせたほうがいい。体操をさせたほうがいい。
いろいろな「◯◯させたほうがいい」が重くのしかかってくる。
私は子どもが生まれる前から、ゆいクリニックで妊娠出産育児について多少学んだ。それまで男性が生きてきた人生の中では何一つ知らなかったことばかりだった。
私は圧倒的に子育てに関する知識が足りないと自分では思う。
だからこそ勉強する度に新しい学びがあり、自分の子供はどうなのか、育児はどうなのかで悩む。
本書には自閉症のリカちゃんを通じて、人間の可能性について気づかせてくれる本だ。たらればを話せばキリがないが、それでも今からできることを、丁寧に続ける。
本書で書かれている子育てと比べると、私の子育ては何もやっていないに等しい。神様からもらった子どもたちの才能をただ単に子どもたちが勝手に伸ばしてるだけだ。
子どもはいつどんなときでも成長する。それを信じて私達がなにをすべきかを考えなければいけない。
ビジネス書?自己啓発?育児本?
それは読むひとによっても変わってくると思う。Amazonには、あの神田昌典さんのコメントも掲載されている。
『今後の世の中を先取りして経験した予言の書だと私は思った。
2011年の大震災、リストラ、自閉症に限らず子供のあらゆる問題に至るまで、いつなんどきどんな困難に出会うかはわからない。
そのとき私たちは何かを手放して進むしかない。
新しい社会でどんな人間関係を築くか。
なにを大事に生きていくのか。
この本には、著者の心構えが自閉症というものを通して描かれている』
(作家・神田昌典 新潮社『波』誌より)
リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで : 東条 健一 : 本 : Amazon.co.jp
また有名書評サイトの「HONZ」のコメントは以下の通りだ。
『これは普通の人にも使えることだと気付く。
ルールは3つだけ。
「はっきりと指示する」「失敗させない」「すぐに強化する」。
最後の「強化」とはほめられて出る“やる気”。
ほめられて嫌な気がする人は少ないが、日常生活で叱責は多くあってもほめられることは少ない。
ビジネス書などで「部下はほめて伸ばせ」とよく書かれているのは、このことであったのかと思い当たる。
(中略)
言葉も文字も色も認識できないと言われた娘が、今では自分の欲求を父親に伝えることができるようになった。
この訓練法が日本で行われるようになってまだ数年だろう。
しかし本書を読むと、今まで絶望的だった自閉症児への希望が見えてくる。
それと同時に、人間も動物であり、応用行動分析が日常生活におおいに行かされるべきだと感じた』
(月刊35万PVの有名書評サイト「HONZ」 東えりか 2013/2/26のレビューより)
リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで : 東条 健一 : 本 : Amazon.co.jp
このコメントを見る限りでは、多くの方が「ビジネス」に応用できると感じていると思う。私もそれは確かに感じた。というかヒントだらけである。
しかし私はリアルタイムで子育てをしているため、ヒットするポイントが著名な方々とはちょっと違っていた。
もしも娘が突然ぼくを認識してくれなくなったら
昨日まで保育園の送り迎え時に泣きじゃくっていた娘が、ある日突然父親と認識してくれなくなった。いってらっしゃいという言葉をかけても全く無関心に教室へ歩いて行った・・・。
本書の中にそうした表現がありますが・・・ぼくはその文章を読んだ瞬間に動機が激しくなり、汗が吹き出した。
横で寝ている天使が、世界で最も愛する存在が、ある日突然私を父親だと認識しなくなったら。呼びかけにも反応しなくなったら、目を合わせてくれなくなったら・・・
私はその現実に耐えることはできない。そう思うと・・・本当に辛かった。
最終的には涙がとまらない
私はお涙頂戴のエンターテイメントは苦手だ。本や映画はハッピーな気持ちにさせてくれる数少ないエンターテイメントだと思っている。
しかし本書は違った。最終的にはハッピーエンドとも言えるし、素晴らしいヒューマンドラマのように感じた。でもそれだけではない何かがあった。
同じ子育てをする父親として、仕事を頑張る父親として、リカちゃんの成長にはただただ、涙するしかなかった。
感想まとめ
【リカと3つのルール 自閉症の少女が話すようになるまで】は、最近流行りのアドラー思想とは違う子どもと関わる大切な部分が描かれている。
人間は「喜ぶ」「楽しむ」という能力を上手く利用すれば、どんな困難にも立ち向かっていけると感じた。
本書は子育てに悩む方だけでなく、ビジネスと家庭の両立に不安を抱えているすべての人にオススメしたい。